『ときをかける少女』筒井康隆

 筒井康隆はけっこう読んだけど、何を隠そう、読んだことがなかったのです、「時をかける少女」。原田知世の歌まで知ってるのに。
 映画化に合わせたのか、「角川つばさ文庫」から大きい活字、ルビつきで出版されてて、○子が「買って〜」と言ったものですから、角川文庫と照らし合わせ、ルビ以外は表現が変わってないのを確認してから購入。本屋さんでこんなことやって、怒られなくてよかった。
 で、電車で読む本が払底したもので、ちょこっと借りていきました。
 いつもの筒井さんと違って直球勝負、素直な言葉遣いにびっくり。テレポーテーションとタイム・リープって、当時は新鮮な超能力だったでしょうね。「過去に戻ったら、その時の私と鉢合わせしてしまうけどどうなるの?」という素朴な疑問も解明しつつお話は進みます。
 ラベンダーも、当時はすごく神秘的な、大多数の読者が見たこともかいだこともない植物だったのではないでしょうか(紫色の花、というのがまた神秘的)。
 そういうことを考え出すと変なところに目がいってしまって……
 主人公が夜、高校生のクラスメイトと会いました。その彼はパジャマを着ていました。次にあったときに
「あなたはパジャマを着ていたわ。」と言うと、
「ボクはパジャマなんか持っていない。」と答えるのです。
ふーん、スウェットとTシャツか?と思ったら、彼はいつも寝間着で寝ているのでした。
 寝間着って、健康診断の時とかに羽織らされるあの着物みたいな打ち合わせの、ビジネスホテルでパジャマ代わりに羽織るあれですよね。自宅でもそういうのを着てみんな寝ていたのか、と感心してしまいました(主人公の女の子はネグリジェです)。
 あと、この本には短編が3本入っていて、これがなかなか不気味で面白いです。トクした気分。