『手ぶくろを買いに』新美南吉

手ぶくろを買いに (日本の童話名作選)

手ぶくろを買いに (日本の童話名作選)

 寝る前に○子と読みました。
 国語の教科書によく載っている定番教材ですが、光村の三年生(上)には載っていなくて、てのひら文庫という本で読みました。
 雪の降った日、キツネの子が手袋を買いに行き、母ギツネが化けさせてくれた人間の手ではなく、キツネの手を出してしまうというあの話、あらすじは覚えていましたが、全文読むのは久しぶり。というか子どもの時以来。「おててがちんちんする。」というのはよく覚えているのですが。
 記憶と違って淡々とした書きっぷりです。
 手を間違えた場面でも、「さあ大変です。どうしましょう。キツネの子は『あっ』と思いましたが、もう手をかえるわけにもいきません…」という盛り上げ方をしていると思っていましたが、そんな描写はありませんでした。こどもの頃繰り返し読んで、何度もドキドキして、ホッとした、その思い出が勝手に盛り上げ文体で覚えてしまっていたのでしょう。お話は粉雪のようにサラサラと進んでいきます。ちょっと物足りないような……
 でも、キツネの子が間違えた手を出したとたん、隣の○子がはっと息を呑んで私にしがみついてきましたから、あの抑えた書き方で十分伝わるのですね。