『僕たちの戦争』荻原浩

僕たちの戦争 (双葉文庫)

僕たちの戦争 (双葉文庫)

 文庫の裏を使わせていただきます…

“根拠なしポジティブ”の現代フリーターと昭和19年の「海の若鷲」にあこがれる軍国少年が時空を超えて入れかわった!それぞれの境遇に順応しつつも、ふたりはなんとか元の時代に戻ろうとするが……。
おもしろくてやがて切ない、愛と青春の戦争小説。

です。9月17日(日)夜9時からTBS系スペシャルドラマ第3弾として放送されるそうな。そんな帯がついていたのもあってフラフラ買ってしまいました。配役に上野樹里がいたからね(最近放送された『スウィング・ガールズ』がすっかり気に入って、サントラCDまで買ってしまったものですから…)。
 上野樹里がどの役をするかはだいたいわかりました。今度は山形弁じゃなくて、茨城(筑波?)弁なんだねっぺ。

 衝動買いだったけど、これはなかなか面白かったです。続きが気になるけど、一気読みはもったいない気がして、先を急いてはいけない…と私にしてはめずらしく、二日かけて読みました。で、以下はネタバレらしきものもありますのでどうぞご注意を。
 現代を生きる人たちが昭和の戦時中にタイムスリップしてしまう話は、『終わりに見た街』(山田太一)、『ザ ウィンズ オブ ゴッド』(今井雅之)などが映画やドラマになりました。で、まあ似たような話か…と思って読み出したのですが、この本は「平成から戦時中にトリップしてしまったプータローサーファー(健太)」と「戦時中から平成にトリップしてしまった海軍青年(吾一)」の二種類のタイムトリップが読めます。これがおもしろい。特にトリップした直後の二人のそれぞれのとまどいがなんとも面白くて、一気に引き込まれます。それからも、二人それぞれになんとかトリップ先の生活に慣れようとするのですが、海軍生活に順応しようとする健太は、フリーター時代に培った“接客マニュアル”が役に立ったり、クラブで恋人と踊る吾一は手足をバラバラに動かす“海軍体操”のおかげでうまく踊れたり、よくこんなこと思いつくなぁと感心しきりです。

 タイムトリップものって、やっぱり描きどころは、異時代の何に驚きや違和感を感じるか、ですよね。そんなに読んだことないのですが、町並み、食べ物、服装なんかは月並みで、その作品独特だなぁと印象に残っているのは…
 『碑夜十郎』(半村良講談 碑夜十郎〈上〉 (講談社文庫)は「言葉遣い」でした。NHKのドラマで阿部寛さんがトリップした青年を演じておられていて、
阿部「ここはどこですか?」
江戸時代の人「『ですか』っておめえ、なんだ、その言葉遣いはァ」
みたいな会話があっんです。おやおやこれは面白そうだ…と原作を買いに走りました。
 『大江戸神仙伝』(石川英輔)は魚河岸の「臭い」。ちなみにこの本は、石川英輔の大江戸シリーズの一冊目です。で、これが一番好き。
 『蒲生邸事件』(宮部みゆき)は「寒さ」です。なんせ2・26事件の起こる時代に行ってしまうのですから。蒲生邸事件 (文春文庫)
 『戦国自衛隊』(半村良)はなんだろう?読んだはずだけど印象ないなぁ…戦国自衛隊 (角川文庫)
 で、『僕たちの戦争』では、いろいろあるのですが、「おおーこれは新しい」と思ったのは「字」かな。
 他におすすめタイムスリップものありましたら、ぜひ教えていただきたいものでございます。

 そして、結末ですが…これについては、この本を読んだ人と語り合いたいなぁ…検索してみましょう。さてさて、ドラマではどう料理されるのでしょうか、楽しみです。