『嫌われ松子の一生A woman who kept searching for love』山田宗樹

嫌われ松子の一生
 この本、時々新聞で広告を見ますし、タイトルに引かれて、一度は平積みの文庫版を手に取ってレジに向かおうとまでした私(結局値段を見てやめました)。なんと先週、図書館で単行本を見つけまして、いそいそ借りてまいりました。
 「嫌われ松子」というネーミングからも、広告文からも、松子という女性について、
「最近話題のドラマで、かっこいい男の子達にプロデュースされている、黒い髪を前に垂らしてて、あまり笑わない、あの暗い感じの女の子」をイメージしていがちですが、この物語に出てくる松子はそんなイメージとは全然違います。読み終わって一番に思うのは、「この本に出てくるのは『愛を探し続けた女(A woman who kept searching for love)』なんだけど、もし、この本がそんなタイトルだったら、絶対こんなに読まれまい」ということです。本のタイトルって本当に大切ですね。「嫌われ松子」、よくぞ思いついたものです。
 内容は、刑務所と聖書とくれば、加賀乙彦吉村昭の世界。出所後を追うあたり、また教会内の描写も、まさにそんな感じです。房内の描写は『刑務所の中』(花輪和一)を彷彿とさせます。登場人物の服装を事細かに描こうとするあたりは宮部みゆきでしょうか。文章には特に惹かれませんが、ストーリーは先が知りたくなるようにできております。それから、ただいま興味あることなので、公判資料の閲覧部分、法廷描写などを特に興味深く読ませていただきました。それにしても、400字詰め原稿枚数1071枚の書き下ろしなのだそうです。すごいなあ。わざわざ断ってあるということは、手書きってことなのかなぁ。
 単行本で読んだのですが、装丁がすてきです。鹿の子模様に書名のフォントがよく合って、いい味出してます。私好みの配色だし。前の米原さんの単行本の表紙の絵も面白いんですよ。文庫をお持ちの方もぜひ、単行本も見てみてくださいね。
刑務所の中