『幻色江戸ごよみ』宮部みゆき

幻色江戸ごよみ 宮部みゆき
 今さらなんでこんな昔の本なんだ、と言われそうですが、夏の夜、部屋の明かりを消し、スタンドの灯り(ろうそくや行灯ならなおよい)で読むにはもってこいの一冊!
 実際、家族が寝静まってから一人で読んでて怖くなってきました。
 といっても、ミステリーでもむっちゃこわいホラーでもありません。江戸の下町が舞台の「怪異譚」を集めた短編集です。「お化け」の話が多いのですが、恨みを持った幽霊っぽいのだけでなく、小僧さんを守る(?)御本尊、子どもに思いを残した母の代わりなど、いろいろなお化けが登場します。
 それから、哀しい暮しから抜け出せない人々、大切な登場人物です。この辺は文庫の解説が上手に説明してくれているので、はしょりますね。
 一番好きな話は「神無月」。十分長編になるこのネタをぎゅっと凝縮して、切ない一晩の出来事にしているあたり、本当に宮部さんは語り上手です。