『日暮らし』(上)(下) 宮部みゆき

日暮らし 上 日暮らし 下
 上巻の、「日暮らし」に至るまでが好き。
 登場人物は『ぼんくら』ですっかりおなじみになっていて、懐かしい人たちに会えた気がするし、鉄瓶長屋事件の後、すっかりそれぞれ日常に戻った様子にこちらも安心したりして。
 現代が舞台だと、人物について服装、小物、調度品から描写するのことができて、宮部さんはそれが何とも上手なのですが、時代小説はそれが少しむずかしいようで、代わりに食べ物が大活躍です。前回は煮物が活躍しましたが、今回はお菓子。読んでいると甘いものが食べたくなります。栗餡の茶巾とか、豆大福とか。
 弓之助は少々冴えすぎです。
 私としては、佐吉さんにたっぷりと幸せになってもらいたいです。
 ズンときたのは次の一節。本筋とは深くかかわりませんから、大丈夫。

 そうかな、と平四郎はまた思った。それは理屈だ。宗一郎が自分を宥めるための。本音としては、気持ちは固まっても、踏ん切りをつけたつもりでも、やっぱりまだ飛び出す勇気が出ないということじゃねえのか? だからまわりの反応を見ている。言葉で久兵衛を驚かせ、それはそれでちょっと胸がすっとした。そんなところじゃねえのか。


 読みながら、まさに今の私だよな。平四郎に見抜かれたな、と思いました。こんなこと書くなんて、宮部さんも酷だねえ。

 犯人とか、追い詰め方とかは、いくら「子盗り鬼」で伏線張ってても、賛否両論では?