『クロニクル千古の闇6 決戦のとき』ミシェル・ペイヴァー作さくまゆみこ訳

決戦のとき (クロニクル千古の闇 6)

決戦のとき (クロニクル千古の闇 6)

 ついに最後の闘いです。図書館の予約一番乗り!2010年4月刊行のできたてのほやほやの本。
 どうやってイオストラを倒すのか、フィンケディンが呼びに行ったのは誰なのか、どっこい、お父さんは生きていた、みたいな掟破りがあったらどうしようか、などいろいろ心配しましたが、全巻読んで満足満足。
 ファンタジーって、戦う場面が長かったり、魔法や闘いの技を鍛えるところに重点が置かれてたり、というイメージがありますが、このシリーズは戦うまでの話がやたらと長く、闘いの秘技や魔術よりも、今より6000年も前の、文字も金属も農業も持たない氏族たちの、生きていくための知恵や生きるための闘いの様子が細かく描かれています。それは、空想的な夢物語ではなくて、考古学や民俗学の資料に基づいているのであろう(そして今も生きている氏族を取材して得たであろう)知識を元に書かれていて、そういう裏付けが物語に厚みを与えています。このシリーズは子ども向けファンタジーでは終わらず、大人もトラク達の世界にすっと入っていける、一緒に旅をしてしまう重厚や読み物として楽しめると思います。こんなにごつい6巻を、飽きることなく読み続けられたのは、千古の闇の世界観のおかげです(ハリーは挫折中…)。
 ネタバレチックですが、生霊わたりだって、ただの超能力ではないです。わたってるときの描写が細密で、しかもその能力がオールマイティな、どどーんとした超能力でなくて、初めて別の生き物の中にいる戸惑いやおののきが伝わってきて(アザラシになったときはひげの感覚にびっくりしてるし)、ペイヴァーさんの想像力には脱帽です。
 映画化するとか言う話を聞きましたが、ストーリーを追うだけでなく、そういうところもきっちりやってほしいわぁ。