『出口のない海』横山秀夫

出口のない海 (講談社文庫)

出口のない海 (講談社文庫)

 去年、『僕たちの戦争』を読みました。その夏に映画化された「出口のない海」の原作です。『僕たちの戦争』を読んですぐに、もっと回天のことを知りたいなぁ、『出口のない海』も読みたいなぁ、と思っていたのですがなかなか出会えなくて、先日本屋さんにふらっと寄ったら、目に飛び込んできました。平積みしてたわけじゃないのに不思議。
 回天のことを詳しく知らないうちに訓練所に赴くことになり、過酷な訓練があって…というのは僕たちの戦争と同じだけど、こちらはタイムスリップものではなく、純粋な戦時下の青春群像小説です。回天のことも書きたかったけど、やっぱりその時代を生きた人のことが書きたかったのだと思います。回天のことは、もっと詳しく書いた本があるらしいので(『あゝ回天特攻隊』横田寛)、今度はそっちを読みましょう。
 戦争中って、みんなが「いつか神風が吹く」と思っていた訳ではない、というのはいろいろ読んだり聞いたりしたことがあったけど、それと教育の関係が書かれていて、「なるほど」と思いました。生まれたときから日本が戦争している世代ほど軍国教育を受けていて、開戦の時に学生だとそうでもないのは…とか。でも大人だって聖戦を信じ切ってた人もいたわけだし(あのせっせと文庫で読んだ病院の話なんだったけ?akko教えて*1)。あと「敵」って何だろう?見たこともない国の人たちをどうして殺せたのだろう、にもはっと気づかされます。
 それにしても並木(主人公の名前です)が「どうして回天に乗るのか?」の答えはすごい。こんな風に考えた人もいたのかな。横田さんなのかな。でもちよっと嘘くさい。後付けっぽくて。
 で、この本の内容ではなくて書き方なのですが、なんか違和感を感じました。はじめに映画かドラマがあって、それに沿って書き起こされたノベライズ版みたいな感じなんです。登場人物の性格付けが妙にきっちり決まってて、各章の描写の視線の持ち主も、まるでカメラを持ちかえたかのように上手く切り替わってて、切り取ってつないだような描写が、文章として味わうという感じではないような。そしたら最後にそのわけが分かりました。もともとマガジン・ノベルズ・ドキュメント『出口のない海』(作/横山秀夫、画/三枝義浩)というのがあって、それの全面改稿なんだそうです。そっちも見てみたいけど、マーケットプレイスでもけっこうするし、まずは図書館から当たってみましょう。
 で、この本は映画化されました。
出口のない海 [DVD]

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 そして、なんと、この本を元にまた漫画化されていました。これも探そうかな。
出口のない海 (KCデラックス)

出口のない海 (KCデラックス)

 
 

*1:akkoが教えてくれたので加筆です。『永遠の都』でした。この中では、何度も宮城に向かう人々が描写されます。「参拝」ですね。

永遠の都〈1〉夏の海辺 (新潮文庫)

永遠の都〈1〉夏の海辺 (新潮文庫)

全七巻です。