『テロリストのパラソル』藤原伊織

テロリストのパラソル

テロリストのパラソル

 第41回江戸川乱歩賞受賞作。題名だけは聞いたことあったけど、『13階段』の流れで手に取りました。
 新宿中央公園で大爆発が。偶然その場に居合わせたアル中のバーテン島村は、大学時代の友人達が爆発に巻き込まれ死亡したのを知ります。その大学時代の行動が遠因で指名手配されてしまった島村。彼は友人の仇をとるべく、警察から逃げながら真実を追究し始めるのですが、過去と現在と外国が絡んできて、元刑事のヤクザや元友人の娘が絡んできて、どんどん話はややこしくなっていき、最後に現れた黒幕は…
 ここからは感想ですからネタバレが入ってしまうと思います。
 大学時代の友人達って、つまり一緒に学生運動をやった仲なのです。全共闘とか過激派とかってやつですね。で、島村はグループサウンズが好き。だから爆弾テロに巻き込まれた友人達というのはいかにも訳ありなわけです。私より少し上の世代の人はそれでもう懐かしくなりそうですね。
 公園の真ん中で爆弾が爆発して、その犯人なんか捕まるのかしらん、と思って読んでいたのですが、黒幕にびっくり!そして、その黒幕が真相を語ってくれるのですが……、確かに悲惨な気もするのですが、あまりにも都合よく偶然が重なったとう印象もぬぐえません。読み終わってから、重たい気持ちになりながらも、こんな偶然あり?と思ってしまいました。でも、ほしいものが手に入らないのなら毀してしまえ!という気持ちは分からないでもないのです。私もカーッとなるタチなので。
 アル中のバーテン、島村がものすごく怜悧です。アルコール依存症になると判断力とかどんどんなくなっていくのかと思っていました。さすが、東大中退の元ボクサーですわ。何軒もの家の電話番号を覚えて、すごい記憶力!とおもったけど、ケータイが普及する前は、友達の家の電話番号なんて普通に何件も覚えていたもんね。あとは、元刑事のヤクザ、浅井と、死んだ友人の娘、塔子がいい感じで話を進めてくれます。