『宿命』東野圭吾

宿命 (講談社文庫)

宿命 (講談社文庫)

 まずはあらすじから。
 あるところに刑事がおりまして、殺人事件が起こりまして、その事件に関わる或るファミリーには、彼が小学校からずーっとライバル視していた、学力でもスポーツでも彼が追い越せなかった男がおりまして、ライバルだった二人は刑事と容疑者として対峙するのであります。しかも、容疑者の妻は、なんと、刑事の初恋の相手だったのです…
 という因縁めいた設定です。もちろん、これも読み進みながら分かってくることですが、全然肝心な点には触れていませんから、これくらい知っていても十分本編は楽しめます。
 動機究明しているあたりで、あんまりおもしろくなかったけど、山村美沙の『百人一首殺人事件』を思い出してしまいました。ちょっと似ています。
 ここからはネタバレが入るかもしれないので、ご注意。
 殺人事件の謎解きもいいですけど、刑事と容疑者とその妻の因縁、じゃなくて「宿命」がなんとも奇怪。最後は「ちょっと、ちょっと、そこまでいくか…」という気がしないでもないのですが。
 やっぱりあの妻はかわいそう。あの夫と分かり合えたとしても、「自分の一生って…」と思ってしまうに違いありません。それにしても、あの夫、自分には罪がないことにしてしまって、それでいいの?刑事さんだって、その年になって、自分は両親とは血がつながっていなかったと分からされるなんて、あまりにも酷ですよ。最後の1行のためとはいえ。