『永久も半ばを過ぎて』中島らも

永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)

永遠も半ばを過ぎて (文春文庫)

 昨日は文字盤だと思ったら、今日は読み始めて2ページ目にいきなり、かの名機、
SAZANNA-SP313(SAZANNA色のつもり)が出てきました。その系の本だと知って読み始めたものの、いきなりの展開に思わず笑ってしまう。
 そして、

おれは川だ。毎日、判断不明の言葉がせせらぎとなって、おれの頭から足の先へ抜け流れていく。おれは洗われる。

と、昼に夜に写植をうち続けていた波多野さんが、ついに…という展開で、せせらぎだった言葉が怒濤のようにどうどうと流れ出す場面があります。この台風で増水した川のような言葉の流れが、JISキーボードではなく、SAZANNAのあのキーボードからたたき出されていると想像するとすごいものがあります。かな漢字変換入力なんて生やさしいものではなく、ずらーっと並んだ、漢字を含む役3000の文字群の中から一字一字拾っていくんですよ。画面には「かな→漢字」なんて変換のプロセスはなく、漢字が、かなが、記号が生々しく直に打ち出されていくのです。大河のように言葉を流せるなんて、すごいトランス状態です。
 原稿を打ち込むのではなく、SAZANNAで(GRAFじゃないよ)直接文章書いてた人を知っています。彼曰く、自分の専門分野の文字がどこにあるかは大体分かるけど、ある日ダビングしたカセットテープ(!)のラベルを作ろうと思って、歌の題を入力しようとしたら、漢字がどこにあるか分からなくて往生したんですって。波多野のようにあらゆるタイプの文章をスイスイと入力できるのはすごい、と感心してしまった。プロのオペレータなんだから当たり前なんだけど。
 トヨエツと佐藤浩市とで映画化されたそうなので、今度はそれを見てみなくちゃ。SAZANNA出てくるかな〜。

Lie lie Lie [VHS]

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