『孤宿の人』宮部みゆき
読んで、観て、泣きたい人が増えているそうですが、「せかちゅう」よりずっと泣ける物語です。
藤沢周平の海坂藩のように、架空の藩が舞台です。丸海藩といいます。そう、モデルは丸亀藩です。
内容を書きたいのですが、それはあとにして、まだ読んでいない人が知っても大丈夫なネタを一つ。『ぼんくら』を読んだときにも書いたのですが、丸海藩の人が書いたなら、使わないことばがでてきます。そう「おっぺす」。
後ろから手ひどくおっぺされて、宇佐はつっ転がった。(下巻397ページ 太字は私)
幼稚園の時、遠足と言えば丸亀城か栗林公園だったところで育ちましたから、これは丸亀のことばでないと結構自信もって言えます。
他の作家さんの文章には出てこないことばだから、ちょこっと引っかかってしまうのですよね。
さて、ストーリーのこと
とにかく人が死にすぎます。それもいい人達が。宇佐まで死んでしまうなんて、最後にはほうと二人で仲良く暮らしてほしいと願いながら読んでいたので本当に涙が止まりませんでした。
毒の話をしながら、最後は全然違う方法で加賀様を暗殺します。このあたり、そしてこのトリックの思いつきが、ただの時代小説じゃないなぁと思いました。加賀様が鬼だとか、屋根の上が光るとか、一体これは宮部さんお得意の怪異物なのか、推理物なのか…とじれじれしながら読みました。
ほうは、いい経験をしたし、みなに愛されて、子どもは宝だなあ。大事にしないといけませんよ。そして、呆、方、宝、と名前が変わっていくのがまた涙を誘います。