『冬の虹』津村節子

冬の虹 (新潮文庫)

冬の虹 (新潮文庫)

 使ってることわざ辞典の用例に、『冬の虹』がよくでているのに気づいて、それまではわりと穏当な文ばかりだったのですが、「兄弟は他人の始まり」で、

兄弟は他人の始まり、とはよく言ったものだ、と暁子は俊一夫婦のあしらいが身にこたえた。

という1文が!
 一体、どういう話なんだ、暁子さんの身に何が起こるんだ…とにわかに興味を持って図書館で借りたわけです。なんという野次馬根性。
 これは連載小説だな…という感じの話の進みです。本当に書きたいことのほかに、それには興味がないであろう以外の読者も引きつけないと、という狙いで入れたと思われる内容もあるし、サラ金とか、いじめとか、社会的なことも入れとかないとね、という感じもするし。本当に好きなことだけにしぼったらもっといっぱい書きこめただろうに。着物が、織物が本当に好きだとよくわかりました。