『一瞬の風になれ』1〜3 佐藤多佳子
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100メートル走っている間の描写がまたいいのです。入部したてのレースは一瞬で終わってしまうのだけど、だんだん成長してくると、レース展開や前の走者が見えるようになってきて、たった100メートルの間なのに、ものすごくよく考えるようになるのですよ。すごいなぁ。陸上をしてる人ってこんな感じなのかな。
周りの人もいいですよ。両親、部員、先生、それからライバル。仙波って仙道みたいな名前のライバルが出てきます。キャラは牧っぽい。
ストーリーの骨格がものすごくしっかりしています。競い合いものって、「自分の天才に気づいていない天才」と「天才と騒がれているが、実は努力家タイプ」が出てきて、たいてい天才の方が主人公になってるから、途中で作者が他のキャラクターの方に入れあげてしまって主人公がぶれたり、扱いにくくて消えるキャラがいたり、話がブレブレになることがあるのですが(○○天女の話とか、転校してきた天才投手の話とか)、この本は最初から努力型の方が主人公で、彼の目線で他の選手(天才型やら努力家型やら)を見ているから安定しています。
あと、怪我の扱い方がうまかったです。「この一本が走れたら、死んでも、足がちぎれてもいいんだ。」っていうのは苦手なので(ダンコたる決意は別)、このお話のような必然性ある怪我は納得できました。
『風が強く吹いている』と似てる?ということは全然ありません。ちゃんと違いを分かって話せるようになるわ、これからは。
いつかは○子にも読んでほしいと思いました。