『パレード』吉田修一

パレード (幻冬舎文庫)

パレード (幻冬舎文庫)

 『悪人』は新聞連載の途中で読むのをやめてしまったのだけど、これは映画化された作品だし、山本周五郎賞受賞作品だしということで、吉田修一にもう一回挑戦!と文庫本を買いました。
 とにかく読み終えたけど、やっぱりちょっとしんどかった。
 解説で、川上弘美が「登場人物を好きになった」と書いてあったけど、彼女が好きになったという良介は、彼が語り手である第一章の間は確かに存在したのだけれど、次の章に入ったとたん、桃子のオーナーというぼんやりした影になってしまいました。その調子で各章、話者が変わるのですが、どの登場人物も語ってるうちは存在しているのだけれど、語られる側になるとぼやーっとした影になってしまいます。つまりはどの章の人物も、他の人物のことを影のようにしか感じていないということなのか。そう思うと、この書き方はすごい(でもどうやらこれは狙って書いたことではないみたい。少なくとも川上弘美はそんな風には読んでいません)。
 内容は、二人で住んでいるうちに、何か別物がいるような気がする…という感じのことが最後のほうに書いてあって、それは分かる気がしました。ご飯の配膳をしているときに「もう一人いるんじゃなかったっけ。」と思うこと、時々あるから。
 あとは、自分たちの部屋を外から見ているところ。世界の外にいる感じっておもしろいです。何か夢を見ているような気がして。
 語られる人物が影のように感じるのは、一気に読まなかったせいかもしれません。何日かかけて読んだから。