肩越しの読書

 昨日の金曜日の朝、駅に着いたら何やら不吉なアナウンス。
「電車が遅れまして誠に申し訳…」
うわー、遅れてるよ。遮断機の事故らしい。
よりによって、朝一に会わないといけない人がいる日に限って……

 ホームには人があふれ、自分がどの車両の列に並んでいるのか分からないけど、とにかく待ちます。
 やっと来た新快速は超満員に。せっかく読もうと思った本も開けない。
 ふと見ると、左ナナメ前のおじさんが、座席の上の空間を利用して、文庫本を開いています。この角度からだとなんとか読むことができそうです。よしよし、何の本か知らないけど、中吊り広告より楽しめそうです。おじさんの肩越しに一緒に読ませてもらうことにしました。文庫本の下半分は見えないけど、会話文なら上だけ見えれば十分です。それにしても何の本かな。
 「おしのが…」どうやら時代物らしい。池波正太郎かな、藤沢周平かな。うーんと、「三年ぶりに大川をそぞろ歩く…」いよいよこれは江戸の市井小説らしい。しかし、なんだかエンディングっぽいよ、この感じ、と思ったら、案の定、次のページは「あとがきにかえて」でした。
 「「土佐藩高知県)出身の身びいきになっているかもしれないがご容赦願いたい」みたいなことが書いてある。土佐藩出身だと池波でも藤沢でも司馬遼でもないわけで、うーん、誰だろう?「賞が取れず忸怩たる思いをしている時期にものしたのが短編『蒼龍』である。」のだそうだ。キーワードは土佐藩出身と『蒼龍』ですな。
 でおじさんはパタンと文庫本を閉じてしまいました。カバーがかかっていないので、文庫本は丸裸。裏表紙のマークは文春文庫です。なんていう本やろう、作者は誰やろう……ということで、早速サーチャーしている妹にメール。返信は「蒼龍やったら山本一力や」。『だいこん』しか読んだことないです。「蒼龍」、有名なのでしょうか。今度借りてみましょう。
 電車は遅れたけど、結局人には会えなかったけど、なかなか有意義な満員電車でした。

蒼龍 (文春文庫)

蒼龍 (文春文庫)

 今調べたら、やっぱり文春文庫でした。単行本も出ていました。有名だったのね。妹が即答するはずです。無知がばれて恥ずかしい日記になってしまった…