『半落ち』横山秀夫

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

 今更ながら読みました。現職警察官の梶聡一郎が妻を殺して自首してきたけど、半分しか自供しない、完全黙秘する空白の二日間に何があったか!という話です。刑事、検事、新聞記者、弁護士、裁判官…さまざまな職業の人が謎の解明に挑むんですけど、なかなか進まなくてじれじれする〜!
 ここからネタバレが入ってしまうのでどうぞご注意を。
 梶さんの人となりがいまいち見えなくて、そのせいで梶さんの台詞があまり響いてきませんでした。
 梶聡一郎は「澄みきった目」「深度のある澄んだ瞳」の持ち主だと、刑事、検事、弁護士などによって何度も語られます。でも、その繰り返しだけで梶さんが美しい心の持ち主で、人を殺めたり歌舞伎町に行ったりするような人物ではないと思わせるのはムリがあります。あんまり何度も「澄んだ瞳」が出てくるので、そういう外見とはうらはらに…なのか?ともで思い始めます。なのに「あなたには守りたい人がいますか。」みたいな台詞にぐっとこい、といわれてもねぇ…
 最後の古賀さんの章はむちゃくちゃ展開早かったです。こんな種明かしでいいのかい、という感じ。ここまでじれじれさせたのですから、空白の二日間、最後の一日を丁寧にリアルタイム描写で書いてほしかったです。古賀さん、しっかり見張るとかいいつつ、カップ酒飲んでるのもなんだかなぁ、でした。それに、志木とそんなに簡単に通じ合っていいの?とか、19歳の刑事が取り調べに来るなんて「あり」なん?とかバタバタした展開にボーゼン。それでも「お父さんが二人いる」って泣くよりないやんか、最後の数ページでムリムリやなぁ。
 読み終わって、うーん、これは推理小説というより「人生五十年」とか「平凡な人生だったが語れるものはある」「守りたい人がいる」とかいいたいサラリーマンや男の人向けの本だな、と少し距離を…