『趣味は読書。』斎藤美奈子

趣味は読書。 (ちくま文庫)

趣味は読書。 (ちくま文庫)

 ベストセラーというのはたくさん売れた本のことですが、周りの「趣味は読書」な人は、ベストセラーを「時間とお金を割いてまで読みたくない」と、案外読んでいない。ということは、ベストセラーは「ふだん本を読まない人」が読んでいるのだろう。では、「本読み」はベストセラーを読まなくていいのか?そも、ベストセラーって何が書いてあるんだ?…ということで、斎藤美奈子が、『大河の一滴』『鉄道員』『買ってはいけない』『金持ち父さん 貧乏父さん』『だから、あなたも生きぬいて』『声に出して読みたい日本語』などのベストセラーを、49冊も読んで内容をかいつまんで教えてくれる本です。その上、上記ベストセラー達は、斎藤さんが発見した6つの法則で分類されているのです。どんな法則かは、読んでのお楽しみ。
 斎藤美奈子は『紅一点論』が面白かったので、『誤読日記』を探していたのですが、なかなか図書館ではみつからないのです。で、先々週、ふと本屋さんでこちらを見つけまして、『盾(二谷友里恵)』の章を立ち読み、「これは買わなくては」と、レジに持っていきました。
 面白かったよー!!
 こんなにばっさばっさとやってしまっていいのか〜?と心配になるくらい、小気味よくベストセラーをぶった斬ってくれています。それに、ベストセラーだけあって、既読本も多く、余計にその斬り様に共感するのです。『地下鉄に乗って』を読んで「浅田次郎はもういいや」と思った私ですが、『鉄道員』の解説を読んで、その訳が分かりました。『声に出して読みたい日本語』や教育テレビの「にほんごであそぼ」がいやだな、と思っていた理由も分かりました。
 しかも、紹介も斬り方もユーモアたっぷりなので、「そんな面白いの?」と○子があきれるくらい、笑いました。『よりかからず』『朗読者』あたりいいですねぇ。そうそう、私の好きな宮部みゆきさんの作品、『模倣犯』も斬られています(読んでいません。血がいっぱい出そうだから…)。
 取り上げられているベストセラーが「なつかしいラインナップだなあ…」と思うのは、平凡社のPR誌に連載されていたものが、2002年に単行本になったからです。私の読んだ文庫版(2007年4月初版)には、『国家の品格』『電車男』『鉛筆で奥の細道』など6冊が新たに斬られている上、文庫版向け解説が加わっています。読むならぜひ文庫でどうぞ。
 さて、次は『妊娠小説』かな。