『空中ブランコ』奥田英朗

空中ブランコ

空中ブランコ

 奥田英朗借りてきました。多分この本は、米原万里さんオススメの『イン・ザ・プール』の続きというかその一連のシリーズなんだと思いますが、この本単体で十分楽しめます。『イン・ザ・プール』が見つからないのですよ。司書さんに米原万里さんの本を貸したいくらい。
 精神科医の伊良部のもとに、さまざまな心の病を持った人たちがやってきます。しかし、この伊良部、五歳児なみに幼いことを言い、だだをこねるものですから、患者は伊良部に振り回される羽目になります。ところが、伊良部に翻弄されているうちに、だんだんと、もやもやした霧がすーっと晴れていくのであります。もちろん、伊良部もしっかりたっぷり、患者に楽しませてもらいながら治療しています。
 何を楽しむのかというと、患者さんの職業をやったり、職場に行ったりするのを楽しむのです。それも無理矢理に。例えば、一話目の「空中ブランコ」では、サーカスに行きたがり、空中ブランコをやりたがります。太っちょの精神科医空中ブランコに本気で挑戦する。周りの反応は、空気は…それは読んでのお楽しみ。
 5つの短編からなりますが、どれもおもしろくて、電車の中なのに「わはっ」と声を出して笑ってしまいました。そして、読んでいるうちに、こちらも伊良部と患者さんに癒されていきます。人間不信になったときには、この本を読むと元気でそうです。「ハリネズミ」と「義父のヅラ」は何度読んでも笑ってしまいます。そのあとすっきり。最後の「女流作家」はご自身へのエールなのかな?と思ったりして…
 さ、次はなんとかして『イン・ザ・プール』を探しましょう。