『魂萌え!』桐野夏生

魂萌え !

魂萌え !

 連休中は何も読まなかったくせに、明日から仕事という夜になんで三時までかかって一気読みしてしまうのだー。あと一章、あと一章だけ…とついつい読み進めてしまい、気づいたら最終章でした。
 いきなり主人公の配偶者のお葬式から始まるんですよ。そして主人公は財産と家を取られそうになって、次から次から人は出てくるし、場面は変わるし、一体誰を追えばいいの?問題は何なの?と訳も分からないまま引きずり回され、話に引き込まれていきました。
 59歳の主人公には、高校時代からの仲良し3人友達がいて、この4人が集まったときの会話が好き。好きというか、リアルでこわいもの見たさな気持ちを満たしてくれます。高校のときの友人って、そのときはすごーく仲がいいけど、大人になって、働いたり結婚したり子ども生んだり離婚したり配偶者に死なれたり子どもがぐれたり両親を介護したり、と境遇が変わると、微妙に考え方がずれてくるんですよね。それから、性格の解釈も年に応じて変わります。例えば、はっきりものを言うさばけた性格だったのが、ただのヒステリーおばさんになったとか。その辺がきっちりとらえられててずきんときます。ずきんとくるけど「もっと書いて。もっと読みたい」と思ってしまう。特に最後の「邪道の蕎麦屋」の会話の前半部分が好きですわ。

 新聞に連載されていたそうですね。その名残がところどころに感じられました。この声の主は誰でしょう?続きは明日〜みたいな部分とか、えっ、この人もここにいるなんて、なんて偶然なの〜というちょっと都合のいい感じとか。
 それから、人物を描写するとき、着ている物と色が必ず書かれます。文章を書かれながら、桐野さんの頭の中では登場人物達が色つきで動いているのかな?
 今は朝日新聞に『メタボラ』をご連載中です。今度は男の子が主人公。毎日楽しみに読んでおります。
 そういえば、新聞連載と言うことは、毎回カットがついていたはず。どんな絵だったのかなぁ。